研究業績詳細
論文
インターネットを利用した医療法人の事業報告書等の閲覧に係る各都道府県の方針の違いに関する実態調査
所収
『和光経済』(和光大学社会経済研究所)、第56巻第3号
発行日
2024年3月29日
掲載頁
1-10頁
概要
本論文は、都道府県における医療法人の事業報告書等の閲覧手続について行った実態調査の結果をまとめたものである。まず、医療法人の事業報告書等に対するアクセシビリティについては、ウェブサイト上の案内の有無、閲覧請求にあたっての個人情報の要否、および、即日閲覧可能かについて調査した。次に、医療法人の事業報告書等のうち「関係事業者との取引の状況に関する報告書」について、個人情報にかかわる情報が記載されている(と判断される可能性がある)部分の閲覧可否、および、マスキングの有無について調査した。情報開示、および、個人情報の開示に対して慎重な姿勢をみせる都道府県の数は、2022年に厚生労働省の調査研究事業として行われた「医療法人の事業報告書等に係るデータベース構築のための調査研究事業」の結果と同様であり、都道府県ごとに取り扱いの差があることが確認された。
主要参考文献
- PwCコンサルティング合同会社「医療法人の事業報告書等に係るデータベース構築のための調査研究事業報告書」、2022年。
- 医業経営の非営利性等に関する検討会「医療法人制度改革の考え方~医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿~」、2005年。
- 海老原諭「医療法人に係る会計ディスクロージャー制度のねらいとその限界-会計情報に対する『世間からの目』の違いに着目して-」、和光大学経済経営学部編『現代に問う経済のあり方、経営のあり方』創成社、2021年、所収。
- 海老原諭「医療法人における対関係事業者取引の事業報告書等を通じた実態把握の限界」、『和光経済』、第56巻第1号、2023年。
- 公益法人制度改革に関する有識者会議「報告書」、2004年。
- これからの医業経営の在り方に関する検討会「これからの医業経営の在り方に関する検討会報告書~国民に信頼される、医療提供体制の担い手として効率的で透明な医業経営の確立に向けて~」、2003年。
- 病院会計準則及び医療法人会計基準の必要性に関する研究班「病院会計準則及び医療法人会計基準の必要性に関する研究-病院会計準則見直し等に関する研究報告書-」、2003年。
- 四病院団体協議会会計基準作成小委員会「医療法人会計基準に関する検討報告書」、2014年。
論文
医療法人における対関係事業者取引の事業報告書等を通じた実態把握の限界
所収
『和光経済』(和光大学社会経済研究所)、第56巻第1号
発行日
2023年8月10日
掲載頁
1-13頁
概要
本論文は、第7次「医療法」改正によって、医療法人に対して作成することが義務づけられるようになった「関係事業者との取引の状況に関する報告書」について、その施行後4期の開示状況の変化をまとめたものである(データは、医療法人財務情報データベースMedico Searchを使用して入手した)。「関係事業者との取引の状況に関する報告書」において行われる情報開示は減少傾向にあった。ある取引が関係事業者との取引に該当するか否かの判断には、1000万円基準の他にも、資産や(1%基準)、収益・費用の総額に対する割合(10%基準)を用いる方法もあるが、この4期で規模が増加したものはないため、この減少は、記載対象となる取引自体が減少したか、または、開示逃れのために取引方法が変更されたかによるものであると推定される。
主要参考文献
- PwCコンサルティング合同会社「医療法人の事業報告書等に係るデータベース構築のための調査研究事業報告書」、2022年。
- 青木研「参入規制としての非分配制約規制とその効果について」、『医療と社会』、第9巻第1号、1999年。
- 医業経営の非営利性等に関する検討会「医療法人制度改革の考え方~医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿~」、2005年。
- 医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会「『医療法人の経営情報のデータベース』の在り方に関する報告書」、2022年。
- 海老原諭「医療法人に係る会計ディスクロージャー制度のねらいとその限界-会計情報に対する『世間からの目』の違いに着目して-」、和光大学経済経営学部編『現代に問う経済のあり方、経営のあり方』創成社、2021年、所収。
- 海老原諭「医療法人による『関係事業者との取引の状況に関する報告書』における情報開示の現状と課題-第7次改正『医療法』施行初年度の開示状況帳さをもとに-」、『和光経済』、第54巻第2・3号、2022年。
- 小幡文雄「営利医療の潜在力」、『病院』、第61巻第1号、2002年。
- 谷川栄一「医療の非営利性をめぐって・捕遺-株式会社参入反対論に対するある疑問-」、『社会保険旬報』、第2170号、2003年。
- 塚原薫「医療法人の発展と医療法人制度改革の展開-その活性化をめぐって-」、『名古屋学院大学論集 社会科学篇』、第49巻第3号、2013年。
- 新田秀樹「医療の非営利性の要請の根拠」、『名古屋大学法政論集』、第175巻、1998年。
- 安田総合研究所「『病院におけるアウトソーシング等の活用について』報告書」、2002年。
- 四病院団体協議会会計基準作成小委員会「医療法人会計基準に関する検討報告書」、2014年。
論文
経過措置医療法人に対する留保金課税の導入に関する検討
所収
『和光経済』(和光大学社会経済研究所)、第55巻第2号
発行日
2022年12月20日
掲載頁
1-13頁
概要
医療法人は、民間の医師に対して法人格を取得することを認めたものである。1985年の「医療法」改正により、一人医師医療法人が認められるようになると、個人が税務上の考慮のために法人格を取得することが顕著に行われるようになった。留保金課税は、もともと残余財産の分配という事後配当をけん制することを目的とした税務上の措置であり、第5次「医療法」改正によって社員の持分請求権が原則として禁止されたなかで、依然と同じように社員の持分請求権を認めている医療法人については、持分なし医療法人への転換を促すという意味で、留保金課税の適用について検討することに意義がある。そもそも医療法人は、税務上、会社と同様に普通法人として課税されており、会社でないことを留保金課税を行うべきでない理由とすることは望ましくない。
主要参考文献
- 医業経営の非営利性等に関する検討会「医療法人制度改革の考え方~医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿~」、2005年。
- 海老原諭「医療法人による『関係事業者との取引の状況に関する報告書』における情報開示の現状と課題-第7次改正『医療法』施行初年度の開示状況調査をもとに-」、『和光経済』、第54巻第2・3号、2022年。
- 規制改革・民間開放推進会議「規制改革・民間開放の推進に関する第1次答申-官製市場の民間開放による『民主導の経済社会の実現』-」、2004年。
- 公益法人制度改革に関する有識者会議「報告書」、2004年。
- これからの医業経営の在り方に関する検討会「これからの医業経営の在り方に関する検討会報告書~国民に信頼される、医療提供体制の担い手として効率的で透明な医業経営の確立に向けて~」、2003年。
- 坂井一雄「小規模企業に対する課税のあり方について-小規模企業に対するパス・スルー課税の検討を中心に-」、『税大論叢』、第81号、2015年。
- 品川芳宜「持分あり医療法人の実態と今後の方向性」、『資産承継』、2018冬号、2018年。
- 谷川栄一「医療の非営利性をめぐって・捕遺-株式会社参入反対論に対するある疑問-」、『社会保険旬報』、第2170号、2003年。
- 塚原薫「医療法人の発展と医療法人制度改革の展開-その活性化をめぐって-」、『名古屋学院大学論集 社会科学篇』、第49巻第3号、2013年。
- 豊田堯「医療法人制度改革に関する意見」(医業経営の非営利性等に関する検討会、第8回資料)、2005年。
- 新田秀樹「医療の非営利性の要請の根拠」、『名古屋大学法政論集』、第175巻、1998年。
- 日本医師会「医療における株式会社参入に対する日本医師会の見解」(2009年12月24日定例記者会見)、2009年。
- 日本医師会 会員の倫理向上に関する検討委員会「医の倫理綱領 医の倫理綱領注釈」、2000年。
- 福永肇『日本病院史』PILAR PRESS、2014年。
- 宮脇義男「相続税の課税方式に関する一考察」、『税大論叢』、第57号、2008年。
- 横山壽一「医療法人制度改革と医療の非営利性」、『いのちとくらし研究所報』、第17号、2006年。
- 四元秀伸「留保金課税制度に関する一考察」、『創価大学大学院紀要』、第43集、2022年。
論文
医療法による『関係事業者との取引の状況に関する報告書』における情報開示の現状と課題-第7次改正『医療法』施行初年度の開示状況調査をもとに-
所収
『和光経済』(和光大学社会経済研究所)、第54巻第2・3号
発行日
2022年3月8日
掲載頁
9-26頁
概要
本論文では、第7次「医療法」改正によってすべての医療法人に作成が義務づけられるようになった「関係事業者との取引の状況に関する報告書」について、各医療法人が作成した報告書を概観したうえで、すべての医療法人から比較可能な情報を入手できるようになるためには、どのような指針を設けることが必要であるかについて試案を示した。調査対象は、「医療法」第51条第2項の適用対象法人のうち、調査用のデータベースとして使用したMedico Searchに、「関係事業者との取引の状況に関する報告書」および独立監査人による監査報告書が掲載されている100法人とした。調査の結果、医療法人と関係事業者との関係および取引の説明に関する記述にばらつきがあり、解釈が必要である部分もみられたことから、現時点では、報告書の情報をまとめてデータベース化できる状況にはないとものと判断された。
主要参考文献
- 医療法人の事業展開等に関する検討会「地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設及び医療法人制度の見直しについて」、2015年。
- 医業経営の非営利性等に関する検討会「医療法人制度改革の考え方~医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿~」、2005年。
- 海老原諭「医療法人に係る会計ディスクロージャー制度のねらいとその限界-会計情報に対する『世間からの目』の違いに着目して-」、和光大学経済経営学部編『現代に問う経済のあり方、経営のあり方』創成社、2021年、所収。
- これからの医業経営の在り方に関する検討会「これからの医業経営の在り方に関する検討会報告書~国民に信頼される、医療提供体制の担い手として効率的で透明な医業経営の確立に向けて~」、2003年。
- 総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第2次答申-経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革-」、2002年。
- 新田秀樹「医療の非営利性の要請の根拠」、『名古屋大学法政論集』、第175巻、1998年。
- 福山祐介「医療法人会計基準政策導入の事例分析と今後の課題:東海3県への届出のあった医療法人決算情報書類の分析をもとに」、『日本医療・病院管理学会誌』、第57巻第4号、2020年。
- 四病院団体協議会資金調達の在り方に関する委員会「民間医療機関の資金調達の在り方に関する研究報告」、2004年。