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電子記録債権の処理

最終更新日:2023年12月03日

電子記録債権は、その振出日から支払期日までの間に一定の期間がありますから、ただちに通貨と引き換えられる小切手のように、発生記録が行われたタイミングで、これが決済されたとみなして処理してしまうことはできません。電子記録債権については、発生記録が行われたときから、支払期日が到来するまでの間、将来に支払われる金額や将来に受け取ることができる金額を特別な勘定に一時的に記録しておき、その後、支払期日が到来した時点でその記録を取り崩すという2段階の処理が行われます。

電子記録債務(支払側)の処理

電子記録債務の発生記録が行われたときは、将来に預金口座から支払われる金額を、負債の勘定である電子記録債務勘定に記録します。負債の勘定ですから、新たに電子記録債務の発生記録が行われたときは貸方に、その後、支払期日が到来するなどして、将来の支払義務から解放されたときは借方に、その金額を記録します。

買掛金1,600,000円を支払うため、電子記録債務の発生記録を取引銀行に依頼した。手数料300円は当座預金口座から引き落とされた。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 1,600,000 電子記録債務 1,600,000
支払手数料 300 当座預金 300

その後、電子記録債務1,600,000円について支払期日が到来し、当座預金口座から支払いが行われた。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
電子記録債務 1,600,000 当座預金 1,600,000

電子記録債務(受取人)の処理

電子記録債権の発生記録が行われたときは、その将来に支払いを受けることのできる金額を、資産の勘定である電子記録債権勘定に記録します。資産の勘定ですから、新たに電子記録債権の発生記録が行われ、将来に金銭を受け取る権利を得たときは借方に、その後、支払期日が到来するなどして、将来に金銭を受け取る権利を失ったときは貸方に、その金額を記録します。

売掛金1,600,000円について、電子記録債権によって支払われることとなり、その発生記録が行われた。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
電子記録債権 1,600,000 売掛金 1,600,000

その後、電子記録債権1,600,000円について支払期日が到来し、当座預金口座に1,600,000円が入金された。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
当座預金 1,600,000 電子記録債権 1,600,000

発生記録は誰が行うか

電子記録債務・電子記録債権の発生記録は、支払側、受取側のどちらからでも行うことができます。小切手や手形の場合は、受取側が金銭を受け取るにあたって取立手数料を支払っていましたが、電子記録債権・電子記録債務の場合は、手数料をどちらが負担するかを両者の交渉で決めなければなりません(支払側が発生記録の依頼を行った方が手数料が安くなるように設定されています)。

電子記録債権は、小切手・手形の代わり(ペーパーレス化したもの)といわれますが、手数料の取扱いについてだけは、銀行振込みの場合と同じような形になっています。