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銀行勘定調整表(1) 預金の勘定残高と銀行残高にズレが生じる原因

最終更新日:2024年06月15日

預金についても、現金の場合と同じように、企業側が会計帳簿に記録している金額(帳簿残高)と、金融機関が把握している残高(銀行残高)との間にズレが生じてしまうことがあります。その原因としては、企業側が実際の預金口座の動きを無視して記録を行ってしまうということもありますし、金融機関側が企業側に連絡なく入出金の処理をしてしまうというものもあります。

企業側の処理に問題がなく、後に金融機関側の処理が行われれば自然とズレがなくなってしまうのであれば問題はありませんが、企業側の処理に(過)不足がある場合は、記録を追加・修正等する必要があります。企業は、定期的に会計帳簿上の記録と金融機関が行っている記録とを突き合わせて、会計帳簿上の記録を追加・修正等すべき事柄が生じていないかを確認する必要があります。

記録の追加・修正等が必要な場合

企業が入出金の状況を把握していない場合(未連絡)

家賃や水道光熱費、手数料の引き落としのように企業に特段の連絡なしに支払いが行われたり、利息の入金のように企業に特段の連絡なしに入金があったりというケースがこれに当てはまります。企業は、定期的に通帳記入をしたり、取引明細を紹介したりして、会計帳簿に記録されていない入出金がないかどうかを確認する必要があります。

振出し処理した小切手を相手に渡していなかった場合(未渡小切手)

経理担当部門が小切手を振り出し、当座預金勘定の残高を減らす処理を行っているにもかかわらず、その後、その経理担当部門から小切手を相手に渡す(送付する)ことを任されていた担当者が小切手を渡していなかった(忘れていた)などの場合が該当します。しっかりとした企業で「渡し忘れた」という事態が生じることはなかなか考えにくいのですが、後述する先日付小切手にせずに、「後日、小切手を送付する」という約束で代金を支払うことにしていた場合は、渡し忘れてしまうこともあるのかもしれません。

このような場合は、当座預金勘定の金額を減らした処理が誤りということになりますから、当座預金勘定の金額を増やす(借方にその金額を記入する)修正処理が必要になります。

会計帳簿に行われている記録に誤りなどがある場合

その他、会計帳簿に行われている記録に誤りなどがある場合は、当然、その誤った記録を修正しなければなりません。

記録の追加・修正等が必要ない場合

金融機関の営業時間外に取引を行った場合(時間外預入等)

金融機関の営業時間外に取引を行った場合、金融機関側の処理は、その翌日以降(翌営業日)に行われることになりますから、取引を行ったときから、金融機関側の処理が終わるまでの間、帳簿残高と銀行残高にズレが生じてしまいます。かつては夜間金庫への預け入れが代表例でしたが、近年では、インターネットバンキングが広く利用されるようになったこともあり、金融機関の営業時間外(夜間、休日)に振り込みや振り替えを行うことも可能になりました。

ただし、このズレについては、その後、金融機関が処理することで自然に解消されますから、企業側で記録の修正を行う必要はありません。

未取立小切手(未取立手形)

小切手や手形の取立てを依頼した場合、その取立てには、通常、数営業日を要します。当座預金勘定への記録を、小切手や手形の取立てを依頼したときに行っている場合、実際に預金口座に入金されるまでの間、帳簿残高と銀行残高にズレが生じてしまいます。ただし、このズレについても、その後、金融機関が処理することで自然に解消されますから、企業側で記録の修正を行う必要はありません。

なお、電子記録債権については、取立てを依頼する必要がないため、このような理由で勘定残高と銀行残高にズレが生じることはありません。

未取付小切手(未取付手形)

小切手や約束手形を振り出した場合や、為替手形の支払いを引き受けた場合、金銭を受け取る権利を有する人(小切手の場合はその保有者、手形の場合は受取人)が取立てを行わなければ、当座預金口座からの支払いは行われません。当座預金勘定への記録を、小切手を振り出したときや、手形の支払期日に行っている場合、実際に取立てが行われ、預金口座からの支払いが行われるまでの間、帳簿残高と銀行残高にズレが生じてしまいます。ただし、このズレについても、その後、金融機関が処理することで自然に解消されますから、企業側で記録の修正を行う必要はありません。

なお、電子記録債務については、取立てが行われることがないため、このような理由で勘定残高と銀行残高にズレが生じることはありません。

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