定額法による減価償却費の計算
最終更新日:2024年06月15日
定額法とは、減価償却費の額を計算する方法のひとつで、減価償却費の額を時間の経過と比例して認識していく方法です。会計期間の長さが一定である場合、各期に計上される減価償却費の額も一定(定額)になります。
定額法による減価償却費の計算(会計期間の長さが1年間である場合)
1年分の減価償却費
定額法では、次の計算式によって、1年分の減価償却費の額を求めます。
減価償却費(1年分)=(取得原価-残存価額)÷耐用年数
この計算式を使って求めた金額を使って減価償却を行っていくと、耐用年数を経過したときに、有形固定資産の帳簿残高が残存価額と等しくなります。残存価額は、使用済みの物品を売却して得られると期待される金額ですから、この金額は、(減価償却費ではなく)有形固定資産を売却したときの原価となります。残存価額は減価償却の対象とはなりませんが、費用として処理されるという点では減価償却の対象となる金額(取得原価から残存価額を差し引いた残額)と変わりはありません。
期中取得・期中売却の場合
なお、会計期間の途中に有形固定資産を取得した場合、または、会計期間の途中に有形固定資産を売却、廃棄等した場合は、上の計算式によって求めた1年分の減価償却費の額ではなく、そのうち、企業がその有形固定資産を使用していた期間に相当する金額をその会計期間の減価償却費の額とします。
企業が有形固定資産を使用していた期間に相当する金額は、あらかじめ企業が定めたルールにしたがって計算しますが、有形固定資産の使用月数(1か月未満の端数は1か月使用したとみなします)に基づいて計算する月割計算という方法が有名です。この場合、減価償却費の額は、次のように計算されます。
減価償却費=減価償却費(1年分)÷12×使用月数
端数の処理
減価償却費の計算上生じた端数の処理についても、あらかじめ企業が定めたルールにしたがって行います。会計期間中、統一的に処理されていれば、切り捨てでも、切り上げでも、四捨五入でも何でも構いません。
設例
問題
20X1年7月1日、営業車として使用するために乗用車2,000,000円を購入した。この乗用車において、各期の財務諸表に計上される車両運搬具勘定、減価償却累計額勘定および減価償却費勘定の金額を求めなさい。なお、この乗用車の耐用年数は4年、残存価額は200,000円であり、各期の減価償却費の計算は定額法、仕訳は間接法によって行う(1年未満の期間に対応する金額は月割計算によって行い、計算上、1円未満の端数が生じた場合は切り捨てる)。また、会計期間は、毎期4月1日から翌3月31日までの1年間である。
解答
会計期間 | 貸借対照表 | 損益計算書 | |
---|---|---|---|
車両運搬具 | 減価償却累計額 | 減価償却費 | |
20X1年度(20X1/4/1~20X2/3/31) | 2,000,000 | 337,500 | 337,500*1 |
20X2年度(20X2/4/1~20X3/3/31) | 2,000,000 | 787,500 | 450,000*2 |
20X3年度(20X3/4/1~20X4/3/31) | 2,000,000 | 1,237,500 | 450,000*2 |
20X4年度(20X4/4/1~20X5/3/31) | 2,000,000 | 1,687,500 | 450,000*2 |
20X5年度(20X5/4/1~20X6/3/31) | 2,000,000 | 1,800,000 | 112,500*3 |
- *1((2,000,000-200,000)÷4)÷12×9=337,500
- *2(2,000,000-200,000)÷4=450,000
- *3((2,000,000-200,000)÷4)÷12×3=112,500
仕訳が間接法であるため、車両運搬具勘定の金額は取得原価のまま維持され、各期の減価償却費の額は減価償却累計額勘定に積み立てられていきます(参考:減価償却の仕訳の方法(直接法と間接法))。
20X4年度までに3年9か月分の減価償却費を計上していますので、20X5年度の減価償却費の額は、耐用年数4年からこの3年9か月の差し引いた残りの3か月分となります。1年分の減価償却費450,000円を計上してしまうと、減価償却費が9か月分・337,500円過剰に計上されてしまい、車両運搬具の帳簿残高がマイナスになってしまいます(2,000,000円-(1,687,500円+450,000円)=△137,500円)。耐用年数はあくまでも取得時に予想した使用可能年数ですので、実際にその通りになるとは限りません。このような場合であっても、減価償却費の計算は、あくまでも当初の予定にしたがって行います。
会計期間の長さが1年に満たない場合
会計期間の長さが1年に満たない場合、1年分の減価償却費の額をその会計期間の減価償却費の額として計上してしまうことはできません。
会計期間の長さが1年に満たない状況が例外的であり、翌期以後、再び会計期間の長さが1年間に戻るといった場合は、期中取得・期中売却の場合の計算式を利用して、次のように計算してしまうことが簡便でしょう。なお、この簡便な方法は、減価償却費の計算を定額法で行っている場合にしか使えませんから注意が必要です。
減価償却費=減価償却費(1年分)÷12×会計期間の月数
これに対して、6か月決算の企業のように、会計期間の長さが1年未満であることが通常である場合は、毎期、1年分の金額を計算してから、それを会計期間の長さに対応する金額に修正するという2段階の計算をするよりも、毎期、計上されるべき減価償却費の額をはじめから求めておいた方が便利です。
このような場合、有形固定資産を取得等したときに、次の計算式によって、その1年未満の会計期間に対応する減価償却費の額を求めておきます。耐用年数×12÷会計期間の月数とは、耐用年数のなかにいくつの会計期間が入るか(耐用年数の長さは会計期間いくつぶんか)を求めようとするものです。
減価償却費(1年未満の会計期間対応分)
=(取得原価-残存価額)÷(耐用年数×12÷会計期間の月数)
この場合、会計期間中に有形固定資産を取得したり、売却、廃棄等したときは、その会計期間における減価償却費の額を次のように計算します。この計算式では、12か月で割る代わりに、会計期間の月数で割って1か月分の金額を求めています。
減価償却費=減価償却費(1年未満の会計期間対応分)÷会計期間の月数×使用月数