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【有形固定資産】除却時の処理

最終更新日:2024年02月25日

企業が営業活動のなかで使用していた有形固定資産を使用しなくなった場合は、その有形固定資産について記録されていた金額を有形固定資産の勘定から取り除く除却という手続が行われます。このようにすることで、有形固定資産の各勘定には、営業活動のなかで実際に使用されている金額のみが残り、会計情報の有用性が高まります。

有形固定資産については、中古車市場のようにある程度の規模の市場があるものはどちらかといえば珍しく、売却しようにもなかなか買手が見つからないことがあります。また、廃棄をするにしても、行政への手続が必要なものなどについては、それが企業からなくなるまで一定の時間がかかります。そこで、会計帳簿上は、除却という手続を通じて、先にその有形固定資産がなくなったことにしてしまうわけです。

有形固定資産を除却したときは、その有形固定資産について各勘定に行われていた記録を消去するとともに、除却した有形固定資産の正味売却可能価額を貯蔵品勘定売却に振り替えたうえで(正味売却可能価額がある場合)、除却による利益または損失の記録を行います。また、期中に使用した有形固定資産をその会計期間中に除却したときは、その会計期間に係る減価償却費の計上も必要になります。

【設例】20X4年6月30日、当社が保有する次の車両運搬具を除却した。なお、除却した有形固定資産の正味売却価額は150,000円と見積もられる。当社の会計期間は毎年1月1日から12月31日までの1年間であり、1年未満の期間に対応する金額は月割計算によって求めるものとする。

  • 取得日:20X1年1月1日
  • 取得原価:1,800,000円
  • 減価償却費の計算方法:定額法
  • 耐用年数:6年
  • 残存価額:ゼロ

除却期における減価償却費の計上

本問では、会計期間の途中である6月30日に車両運搬具が除却されているため、まずは、当期分の減価償却費を計上する必要があります。減価償却の処理は、毎期、決算手続のなかで行われるものですから、前期分までの減価償却の処理はすでに前期までの決算手続において終わっています。このため、有形固定資産を除却したときに計上する減価償却費の額は、当期分(除却期分)だけの金額になります。

減価償却の仕訳を直接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 150,000 車両運搬具 150,000

減価償却の仕訳を間接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 150,000 減価償却累計額 150,000

※ 当期分の減価償却費の額:(取得原価1,800,000円ー残存価額0円)÷耐用年数6年÷12×6か月=150,000円(当期分の使用月数=6か月[1月~6月])

除却した有形固定資産に関する記録の消去

次に、除却した車両運搬具について、これまで行われてきた記録を消去します。この「これまで行われてきた記録」は、減価償却の仕訳の方法によって、次のように変わります。

したがって、減価償却を直接法で仕訳している場合は有形固定資産の勘定残高、間接法で仕訳している場合は有形固定資産と減価償却累計額勘定の残高の2つを消去します(除却した有形固定資産に係る部分のみ)。なお、どちらにも有形固定資産の勘定残高が入っていますが、その金額は違いますので注意してください(減価償却費の額が控除されているものと、そうでないもの)。

減価償却の仕訳を直接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
車両運搬具 750,000

減価償却の仕訳を間接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却累計額 1,050,000 車両運搬具 1,800,000

なお、どちらも仕訳はまだ完成していません。

※ 前期までに計上された減価償却費の累計額:(取得原価1,800,000円ー残存価額0円)÷耐用年数6年×3年=900,000円(20X1年、20X2年、20X3年の3年分)

※ 直接法における車両運搬具勘定の残高金額:取得原価1,800,000円ー前期までに計上された減価償却費の累計額900,000円―当期分の減価償却費の額150,000円=750,000円

※ 間接法における減価償却累計額勘定の残高金額:前期までに計上された減価償却費の累計額900,000円+当期分の減価償却費の額150,000円=1,050,000円

除却した有形固定資産の貯蔵品勘定への振替え

次に、除却した有形固定資産の正味売却可能価額を貯蔵品勘定に振り替えます。貯蔵品勘定は、(営業活動のために使用するのではなく、)売却することを予定しているものを記録するための勘定です。

売却を予定しているものが記録される場所ですから、その記録は、売却したときにどれだけの金額によって行います。これを正味売却可能価額といい、予想される売却価額から、その売却のために要する費用を差し引くことで計算されます。

減価償却の仕訳を直接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貯蔵品 150,000 車両運搬具 750,000

減価償却の仕訳を間接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却累計額 1,050,000 車両運搬具 1,800,000
貯蔵品 150,000

なお、どちらも仕訳はまだ完成していません。

除却損益の計上

最後に、車両運搬具の除却によって得られた利益または損失の額に関する記録をさきほどの記録に追加します。この利益または損失の金額は、これまで行ってきた仕訳の貸借差額として求められます。まだ除却した有形固定資産は売却されていませんが、正味売却可能価額を使って利益または損失の額を計上してしまいます。

この差額は、借方と貸方のどちらか金額が小さい方に追加します。そして、借方に金額を追加した場合は損失(正味売却可能価額の方が小さいから)、貸方に金額を追加した場合は利益(正味売却可能価額の方が小さい=売却価額の方が大きいから)を意味します。有形固定資産を売却したことにより生じた損失または利益の額は、固定資産除却損勘定または固定資産除却益勘定に記録します。

減価償却の仕訳を直接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
貯蔵品 150,000 車両運搬具 750,000
固定資産除却損 600,000

減価償却の仕訳を間接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却累計額 1,050,000 車両運搬具 1,800,000
貯蔵品 150,000
固定資産除却損 600,000

貯蔵品の売却がまだ行われていないため、固定資産除却益は、現行基準では、原則として計上することが禁じられている未実現利益となります。

売却できる有形固定資産については、(理論上、)減価償却を行うにあたって残存価額の見積もりが行われているはずで、除却益の金額が生じたとしても大きくなりすぎることはないでしょう(重要性が低いものとしてそのまま処理することが認めら3れる可能性があります)。

除却益の金額が大きくなりすぎる場合は、減価償却を行うにあたっての残存価額の見積もりが誤っていたと考えて、会計上の見積もりの変更としての処理が求められることになる可能性もあるかもしれません。

なお、貯蔵品をその後売却する予定がない(廃棄する予定である)場合は、貯蔵品勘定への記録は行いません(廃棄費用のみを計上して貯蔵品勘定をマイナス(貸方残高)にするようなことはしません)。

有形固定資産を除却したときの仕訳・まとめ

有形固定資産を除却したときは、これまで説明してきたように、(1)当期分の減価償却費を計上する仕訳、(2)これまでに行われている記録を消去し、除却損益を計上する仕訳の2つを行います。ただし、(1)の仕訳が行われるのは、期中に除却が行われたとき(当期分の減価償却費があるとき)のみとなります。

減価償却の仕訳を直接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 150,000 車両運搬具 150,000
貯蔵品 150,000 車両運搬具 750,000
固定資産除却損 600,000

減価償却の仕訳を間接法で行っている場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 150,000 減価償却累計額 150,000
減価償却累計額 1,050,000 車両運搬具 1,800,000
貯蔵品 150,000
固定資産除却損 600,000

なお、それぞれ1つ目の仕訳と2つ目の仕訳の減価償却累計額を相殺して仕訳を行う方法もありますが、借方に計上した金額と貸方に計上した金額の差額を求めるだけですので、これ以上の説明は省略します。