海老原諭ウェブサイト

消耗品の処理

最終更新日:2024年02月25日

消耗品とは、企業が自ら使用する目的で保有する物品のうち、通常、取得した会計期間のうちに使用されてしまうもの(使用期間が1年未満)であったり、取得価額が少額で、企業全体の財産の状況を把握するにあたって重要性が乏しいと認められるものをいいます。重要性が乏しいという特徴から、消耗品については、同じ使用目的で取得される有形固定資産よりも簡便な処理を行うことが認められます。

消耗品の処理(簡便な処理)

消耗品を取得した場合は、その取得原価を消耗品費勘定に記録します。消耗品は、企業全体の財産の状況を把握するにあたって重要性が乏しいため、記録される勘定を細かく分ける必要はありません。

【例】事務所で使用するコピー用紙1,000枚を購入し、代金2,000円は現金で支払った。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 2,000 現金 2,000

なお、消耗品費勘定は費用の勘定です。この簡便な処理は、代金を支払うと同時に受け取った消耗品をただちに使用してしまったと考えて行う処理になります(実際にはこれから使用することになりますが、会計帳簿上は、使ってしまったと仮定するわけです)。企業は代金を支払うのと引き換えに消耗品を受け取るため、このタイミングでは企業の純資産は増減していませんが、その直後に消耗品を使ってしまったと仮定するため、結局、純資産が減少したものとして費用の勘定を使用します。

この方法では、会計帳簿上、取得した消耗品は使ってしまったと仮定されていますから、その後、実際に消耗品を使用したときに仕訳を行う必要はありません。

理論的な処理をした場合の問題

消耗品をこのような簡便な処理ではなく、理論的な処理で行ったとするとどのようになるのでしょうか。ここで理論的な処理とは、商品や有形固定資産のように、取得時に企業の財産(資産)として処理しておき、その後、企業から失われたときや時の経過に応じて資産から費用に振り替えていくという処理のことをいいますが、この場合、次のような形で企業に過重な負担が生じます。

  1. 消耗品を消費するたびにその取得原価を費用の勘定に振り替えていかなければならない
  2. 消耗品について耐用年数、残存価額を予想したうえで減価償却を行わなければならない

消費するたびに費用の勘定に振り替える

まず、使い捨ての消耗品については、消耗品を消費するたびに、その消費した部分に相当する金額を資産の勘定(消耗品勘定)から費用の勘定(消耗品費)勘定に振り替えていく必要があります。消耗品は企業の至るところで使用されており、一度、倉庫から出したらその使用状況を把握するのは非常に大変です。消耗品のような重要性の乏しい財産についてまで、そのような過重な負担をかけなければならないというのは「無駄な仕事」ということができるでしょう。

【例1】事務所で使用するコピー用紙1,000枚を購入し、代金2,000円は現金で支払った。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品 2,000 現金 2,000

【例2】その後、コピー用紙1枚を使用し、その取得原価2円(=2,000円÷1,000枚)を消耗品費勘定に振り替えた。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 2 消耗品 2

この仕訳は、購入したコピー用紙がなくなるまでずっと行われます。この方法を採用した場合の負担の大きさ(面倒くささ)がイメージできるでしょう。

使用期間に応じて減価償却を行う

掛時計や電卓のように、1年以上にわたって使用できるものの、取得原価が小さく企業全体の財産の状況を把握するにあたって重要でないものも消耗品に分類されます。このようなものについては、会計期間が終わるごとに減価償却を行う必要があります。減価償却は、購入した物品の取得原価をそれが使用できると見込まれる期間にわたって配分する手続であり、各期に配分される金額を計算するためには、1つ1つの物品について、それが何年使えるか、使用簿に売却できるか(できるならばどのくらいの値段で売却できるか)を予想しなければなりません。この場合は、たくさんの消耗品について予想が必要であるうえ、売却・廃棄時の処理も必要となります。

【例1】事務所で使用する掛け時計を8,000円で購入し、代金は現金で支払った。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品 8,000 現金 2,000

【例2】決算にあたり、【例1】で取得した掛け時計について減価償却を行う。耐用年数は2年(当期中の使用期間は6か月)、残存価額はゼロであり、減価償却費の額は定額法によって求めるものとする。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 2,000 消耗品 2,000
  • 減価償却費の額:(取得原価8,000円-残存価額0円)÷耐用年数2年×(当期中の使用月数6か月÷12か月)=2,000円

簡便な処理が認められる理由

もともと会計の目的は、その情報を利用する人々に対して、企業の状況を理解してもらうためことにあります。したがって、どのような情報が提供されるべきか、どの程度の厳密さで情報提供が行われるべきかについては、企業側の一方的な判断ではなく、情報利用者の立場も踏まえて考える必要があります。

今日の企業会計は、企業に対して元手となる資金を提供する投資者や金融機関を主たる情報利用者として考えてきました。これらの人々は、企業がその営業活動から十分な利益を獲得し、その一部を配当や利息といった形で還元してくれることを望んでいます。消耗品の処理は、企業の営業活動の成果と直接関係するものではないため、これらの人々は、その管理や簿記上の手続に時間と手間をとられて、本業に掛けられる時間や手間を浪費してほしくはないと考えています。簿記の世界のなかだけで通用する「理論的な処理」は、情報利用者側からも求められていないのです。

なお、簡便な方法が認められる理由について、「企業会計原則注解」では、次のように説明されています。

企業会計原則注解 注1

企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。