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定率法による減価償却費の計算

定率法とは

定率法とは、会計期間ごとに有形固定資産の未償却残高(有形固定資産の取得原価からそれまでに計上した減価償却費の合計額を控除した金額)の一定割合を減価償却費として計上していく方法をいいます。有形固定資産の未償却残高は、減価償却を行うたびに少なくなっていきますから、各期に計上される減価償却費の額も会計期間ごとに少なくなっていきます。

減価償却費の計算

基本的な計算方法

定率法において、各期の減価償却費の額は、次の計算式によって計算されます。なお、会計期間の長さは1年間であり、会計期間の期首から期末までまるまる有形固定資産を使用していたものとします。

減価償却費(1年分)=(取得原価-それまでに計上した減価償却費の累計額)×償却率

償却率は、次の計算式によって求められます。

償却率=1-{(残存価額÷取得原価)(1÷耐用年数)

【例】20X1年1月1日に40,000円で取得した備品について、定率法により減価償却を行う(仕訳は直接法)。この備品の残存価額は取得原価の10%、耐用年数は4年である。また、会計期間は、毎期1月1日から12月31日までの1年間である。

各期の仕訳

20X1年12月31日

償却率:1-{(4,000円÷40,000円)(1÷4年)}=0.437……

減価償却費の額:40,000円×0.437……≒17,506円

(借) 減価償却費 17,506
(貸) 備品 17,506
20X2年12月31日

減価償却費の額:(40,000円-17,506円)×0.437……≒9,845円

(借) 減価償却費 9,845
(貸) 備品 9,845
20X3年12月31日

減価償却費の額:(40,000円-17,506円-9,845円)×0.437……≒5,536円

(借) 減価償却費 5,536
(貸) 備品 5,536
20X4年12月31日

減価償却費の額:(40,000円-17,506円-9,845円-5,536円)-4,000円=3,113円
最終年度は、残存価額のみが残るように、未償却残高が残存価額を超える部分を減価償却費とします。

(借) 減価償却費 3,113
(貸) 備品 3,113

以上の仕訳をもとに、期首および期末の帳簿価額、減価償却費の額をまとめると次のようになります。各期の減価償却費の額は会計期間ごとに少なくなっていきます。

帳簿価額(期首) 減価償却費 帳簿価額(期末)
2001年 40,000 17,506 22,494
2002年 22,494 9,845 12,649
2003年 12,649 5,536 7,113
2004年 7,113 3,113 4,000

有形固定資産を期中取得、期中売却等した場合

有形固定資産を会計期間の途中で取得したり、会計期間の途中で売却・廃棄等した場合は、会計期間の長さと、その会計期間中にその有形固定資産が使われていた期間が一致しなくなります。このような場合は、まず、1年分の減価償却費の額を計算したうえで、その金額を会計期間中の有形固定資産の使用期間分に修正します(会計期間の長さは引き続き1年間とします)。この修正のための計算について、有形固定資産の使用期間を日数で行うときは日割計算、月数で行うときは月割計算といいます。

減価償却費=減価償却費(1年分)÷365×会計期間中の使用日数……日割計算の場合

減価償却費=減価償却費(1年分)÷12×会計期間中の使用月数……月割計算の場合

なお、日割計算の場合の1日未満の期間(5時間、12時間など)は1日に繰り上げます。同様に、月割計算の場合の1か月未満の期間(2日、15日など)は1か月に繰り上げます。少しでも有形固定資産を使用したという事実を計算から取り除いてしまわないためです。

【例】20X1年4月1日に40,000円で取得した備品について、定率法により減価償却を行う(仕訳は直接法)。この備品の残存価額は取得原価の10%、耐用年数は4年である。また、会計期間は、毎期1月1日から12月31日までの1年間であり、1年未満の期間に対応する金額は月割計算によって求める。

各期の仕訳

20X1年12月31日

償却率:1-{(4,000円÷40,000円)(1÷4年)}=0.437……

減価償却費の額:40,000円×0.437……÷12×9か月=≒13,130円

(借) 減価償却費 13,130
(貸) 備品 13,130
20X2年12月31日

減価償却費の額:(40,000円-13,130円)×0.437……≒11,760円

(借) 減価償却費 11,760
(貸) 備品 11,760
20X3年12月31日

減価償却費の額:(40,000円-13,130円-11,760円)×0.437……≒6,613円

(借) 減価償却費 6,613
(貸) 備品 6,613
20X4年12月31日

減価償却費の額:(40,000円-13,130円-11,760円-6,613円)×0.437……≒3,719円

(借) 減価償却費 3,719
(貸) 備品 3,719
20X5年3月31日

減価償却費の額:(40,000円-13,130円-11,760円-6,613円-3,719円)-4,000円=778円
最終年度は、残存価額のみが残るように、未償却残高が残存価額を超える部分を減価償却費とします。

(借) 減価償却費 778
(貸) 備品 778

以上の仕訳をもとに、期首および期末の帳簿価額、減価償却費の額をまとめると次のようになります

帳簿価額(期首) 減価償却費 帳簿価額(期末)
2001年 40,000 13,130 26,870
2002年 26,870 11,760 15,110
2003年 15,110 6,613 8,497
2004年 8,497 3,719 4,778
2005年 4,778 778 4,000