定率法による減価償却費の計算
定率法とは
定率法とは、各期の減価償却費として、有形固定資産の取得原価からそれまでに計上された減価償却費の累計額を控除した残額(未償却残高)の一定割合を計上していく方法です。会計期間を追うにつれて、減価償却費の累計額は増えていきますから(未償却残高は減っていきますから)、各期に計上される減価償却費の額は、会計期間ごとに減っていきます。
基本的な計算方法
1年分の減価償却費
定率法による減価償却費の計算は、1年分の減価償却費の額を計算するところからはじまります。わが国では、多くの企業が会計期間の長さを1年間としていますが、このような企業の場合、期首から期末まで通して使用した有形固定資産の減価償却費は、次の計算式で求めた1年分の減価償却費の額となります。
減価償却費(1年分)=(取得原価-それまでに計上した減価償却費の合計額)×定率法償却率
ここで、定率法償却率とは、有形固定資産を使用できると見込まれる期間(耐用年数)が経過した後に、その有形固定資産を売却することによって得られると見込まれる金額(残存価額)が残るように定めた償却率のことであり、次の計算式によって求められます。
定率法償却率=1-{(残存価額÷取得原価)(1÷耐用年数)}
取得原価からそれまでに計上した減価償却費の合計額を控除した残額(未償却残高)に定率法償却率を掛けた結果、端数が生じた場合に、端数をどのように処理するかは、各企業でルールを定めて処理します。なお、一度決めたルールは正当な理由がないかぎり継続して使用します。この場合、耐用年数最後の年度は、有形固定資産の帳簿価額が不自然に残ったり、マイナスになったりしないように調整を行う必要があります。
たとえば、第1期の期首に取得した取得原価40,000円、残存価額4,000円、耐用年数3年の備品について、定率法で減価償却を行っていく場合(1円未満切り上げ)、各期における減価償却費の額は次のようになります。
1. 定率法償却率の計算
- 定率法償却率
- 定率法償却率=1-{(残存価額4,000円÷取得原価40,000円)(1÷3年)}=0.5358……
2. 各期の減価償却費の額の計算
- 第1期
- 取得原価40,000円×0.5358……=21,433.64……円 ∴21,434円
- 第2期
- (取得原価40,000円-第1期減価償却費21,433.64……円)×0.5358……=9,968.61……円 ∴9,969円
- 第3期
- (取得原価40,000円-第1期減価償却費21,434円-第2期減価償却費9,969円)-残存価額4,000円=4,567円 ∴4,567円
なお、第3期について、端数調整および残存価額を4,000円とする調整を行わずに計算を行うと、減価償却費の額は(取得原価40,000円-第1期減価償却費21,433.64……円-第2期減価償却費9968.61……円)×0.5358……=4,617.73……円となります。この金額を使って第3期末の帳簿残高を求めると、取得原価40,000円-第1期減価償却費21,433.64……円-第2期減価償却費9,968.61……円-第3期減価償却費4,617.73……円=4,000円となり、当初予定されていた残存価額と一致します。これは、定率法償却率が正しく計算できていたことの証となります。
期中の使用期間が1年に満たない場合
定率法の場合も、定額法の場合と同じように、会計期間の途中で取得したり、売却したりするなどして期中の使用期間が1年に満たないときは、上の計算式で求めた1年分の減価償却費の額を、会計期間中に有形固定資産を使用した日数または月数に応じて按分計算することが必要になります。
- 使用日数で按分する場合(日割計算)
- 1年分の減価償却費の額÷365×使用日数
- 使用月数で按分する場合(月割計算)
- 1年分の減価償却費の額÷12×使用月数
この場合も、端数処理は企業が定めたルールにしたがって行います。