定額法による減価償却費の計算
定額法とは
定額法とは、有形固定資産の減価償却費を、会計期間中の使用期間に比例して計上していく方法をいいます。通常、会計期間の長さは一定ですから、各期に計上される減価償却費の額も一定の金額となります。
減価償却費の計算
基本的な計算方法
定額法において、各期の減価償却費の額は、次の計算式によって計算されます。なお、会計期間の長さは1年間であり、会計期間の期首から期末までまるまる有形固定資産を使用していたものとします。
減価償却費(1年分)=(取得原価-残存価額)÷耐用年数
定額法は、時間の経過に応じて減価償却費を計上していく方法であるため、減価償却費の計算にあたっては、「その有形固定資産をどれだけの期間使用するのか」に関する情報が必要です。この全体の使用期間のことを耐用年数といいます。
【例】20X1年1月1日に40,000円で取得した備品について、定額法により減価償却を行う(仕訳は直接法)。この備品の残存価額はゼロ、耐用年数は4年である。また、会計期間は、毎期1月1日から12月31日までの1年間である。
各期の仕訳
20X1年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年=10,000円
(借) | 減価償却費 | 10,000 |
(貸) | 備品 | 10,000 |
20X2年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年=10,000円
(借) | 減価償却費 | 10,000 |
(貸) | 備品 | 10,000 |
20X3年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年=10,000円
(借) | 減価償却費 | 10,000 |
(貸) | 備品 | 10,000 |
20X4年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年=10,000円
(借) | 減価償却費 | 10,000 |
(貸) | 備品 | 10,000 |
以上の仕訳をもとに、期首および期末の帳簿価額、減価償却費の額をまとめると次のようになります(参考までに各期間における使用月数をあわせて表に入れてあります)。各期の減価償却費の額は一定(10,000円)で、帳簿価額も一定額(40,000円)ずつ減少していくことが分かります。
帳簿価額(期首) | 期中の使用月数 | 減価償却費 | 帳簿価額(期末) | |
---|---|---|---|---|
2001年 | 40,000 | 12か月 | 10,000 | 30,000 |
2002年 | 30,000 | 12か月 | 10,000 | 20,000 |
2003年 | 20,000 | 12か月 | 10,000 | 10,000 |
2004年 | 10,000 | 12か月 | 10,000 | 0 |
有形固定資産を期中取得、期中売却等した場合
有形固定資産を会計期間の途中で取得したり、会計期間の途中で売却・廃棄等した場合は、会計期間の長さと、その会計期間中にその有形固定資産が使われていた期間が一致しなくなります。このような場合は、まず、1年分の減価償却費の額を計算したうえで、その金額を会計期間中の有形固定資産の使用期間分に修正します(会計期間の長さは引き続き1年間とします)。この修正のための計算について、有形固定資産の使用期間を日数で行うときは日割計算、月数で行うときは月割計算といいます。
減価償却費=減価償却費(1年分)÷365×会計期間中の使用日数……日割計算の場合
減価償却費=減価償却費(1年分)÷12×会計期間中の使用月数……月割計算の場合
なお、日割計算の場合の1日未満の期間(5時間、12時間など)は1日に繰り上げます。同様に、月割計算の場合の1か月未満の期間(2日、15日など)は1か月に繰り上げます。少しでも有形固定資産を使用したという事実を計算から取り除いてしまわないためです。
【例】20X1年4月1日に40,000円で取得した備品について、定額法により減価償却を行う(仕訳は直接法)。この備品の残存価額はゼロ、耐用年数は4年である。また、会計期間は、毎期1月1日から12月31日までの1年間であり、1年未満の期間に対応する金額は月割計算によって求める。
各期の仕訳
20X1年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年÷12×9か月=7,500円
(借) | 減価償却費 | 7,500 |
(貸) | 備品 | 7,500 |
20X2年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年=10,000円
(借) | 減価償却費 | 10,000 |
(貸) | 備品 | 10,000 |
20X3年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年=10,000円
(借) | 減価償却費 | 10,000 |
(貸) | 備品 | 10,000 |
20X4年12月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年=10,000円
(借) | 減価償却費 | 10,000 |
(貸) | 備品 | 10,000 |
20X5年3月31日
減価償却費の額:(40,000円-0円)÷4年÷12×3か月=2,500円
(借) | 減価償却費 | 2,500 |
(貸) | 備品 | 2,500 |
以上の仕訳をもとに、期首および期末の帳簿価額、減価償却費の額をまとめると次のようになります(参考までに各期間における使用月数をあわせて表に入れてあります)。会計期間中の使用月数が少ない2001年と2005年は、2002年から2004年よりも減価償却費の額が少なくなっています。このように、定額法といっても、各会計期間に計上される減価償却費の額が必ずすべて同じになるというわけではありません。
帳簿価額(期首) | 期中の使用月数 | 減価償却費 | 帳簿価額(期末) | |
---|---|---|---|---|
2001年 | 40,000 | 9か月 | 7,500 | 32,500 |
2002年 | 32,500 | 12か月 | 10,000 | 22,500 |
2003年 | 22,500 | 12か月 | 10,000 | 12,500 |
2004年 | 12,500 | 12か月 | 10,000 | 2,500 |
2005年 | 2,500 | 3か月 | 2,500 | 0 |