先入先出法による払出原価の計算
先入先出法とは
先入先出法(First In, First Out Method; FIFO)とは、同一種類の商品について、先に受け入れたものから順に払い出していくという仮定のもとで払出価額の計算を行う方法です。このため、先入先出法では、たとえ同じ種類の商品であったとしても、受け入れたタイミングごとに別々のものとして取り扱われることになります。先入先出法は、受入時期ごとに取得原価が大きく変動する商品について、貸借対照表上に期末の時価に近しい金額を表示したい場合などに使用されます。
先入先出法は、商品の払出数量の把握を会計期間中つねに行っている場合にも(継続記録法)、期末など一定のタイミングを決めて行っている場合にも(棚卸計算法)採用できる方法です。ただし、どちらによる場合であっても、商品の受入数量については、会計期間中つねに記録等を行って把握しておく必要があります。この商品の受入れの状況を記録するにあたっては、商品有高帳とよばれる補助簿が使用されることもあります。
払出価額を払出しのつど計算する場合(継続記録法)
商品の払出価額を払出しのつど計算する場合は、次のように行います。なお、この場合は、商品の受入れおよび払出しに関する記録を会計期間中つねに行っておく必要があります。
- 払い出した商品について、払出直前に保有していた商品の受入日ごとの数量および金額を把握する
- 受入日が早いものから順に払い出したものと考えて、払出価額を計算する
【例】6月25日、A商品20個を売り上げた。なお、払出直前のA商品の保有状況は、次の通りであった。
・6月14日仕入分:15個、1,450円
・6月18日仕入分:30個、3,000円
・6月23日仕入分:25個、2,600円
【答】
・6月14日仕入分:1,450円(払出数量20個>14日仕入分15個なので、14日仕入分の商品はすべて払い出す(按分計算不要))
・6月18日仕入分:3,000円÷30個×5個 = 500円(払出数量20個-14日仕入分15個=5個分のみでよい(按分計算必要))
・払出価額:1,450円 + 500円 = 1.950円 ∴1,950円
商品有高帳では、商品を仕入れるつど、その仕入れた商品について1単位当たりの取得原価が記録されますが、上の設例の6月14日仕入分のように、払出直前に保有している商品のすべてが払い出された場合は、1単位当たりの取得原価を計算しなくても、払出価額を求めることができます。
払出価額を一定期間ごとにまとめて計算する場合(棚卸計算法)
商品の払出価額を決算時など一定期間ごとにまとめて計算する場合は、次のようにその計算を行います。なお、この場合も、商品の受入れに関する記録については、会計期間中つねに行っておく必要があります。
- 払出価額を計算するタイミングで実地棚卸を行い、その時点で保有している数量を確認する
- 実地棚卸を行った商品について、直前に行った実地棚卸後の商品の受入状況(数量および金額。直前の期間からの繰越分を含む)を、その受入日ごとに把握する
- 受入日が新しいものから順に、その時点で保有する商品の額(在庫)とする
- 2.で把握した商品の受入金額の合計から、3.で求めた在庫金額を差し引いた残りが、直前に払出価額を計算してからその時点までの払出価額の合計額となる
【例】6月30日、B商品の実地棚卸を行ったところ30個の在庫があった。なお、当社では払出価額の計算を1か月ごとに行っており、6月中のB商品の受入状況は次の通りであった。
・前月からの繰越分:10個、1,100円
・6月3日仕入分:30個、2,900円
・6月14日仕入分:35個、3,500円
・6月26日仕入分:25個、2,500円
【答】
・6月中の受入総額:1,100円 + 2,900円 + 3,500円 + 2,500円 = 10,000円
・在庫(1)[6月26日仕入分]:2,500円(在庫数量30個>26日仕入分25個なので、26日仕入分の商品はすべて在庫(按分計算不要))
・在庫(2)[6月14日仕入分]:3,500円÷35個×5個 = 500円(在庫数量30個-26日仕入分25個=5個分のみでよい(按分計算必要))
・払出価額:10,000円 - 2,500円 - 500円 = 7,000円 ∴7,000円
実地棚卸によって確認された在庫の数量は、まだ払い出されていない商品です。先入先出法は、先に受け入れたものから順に払い出していくと仮定して払出価額を計算する方法ですから、まだ払い出されていない商品の金額の計算には、逆に、最も後に受け入れた商品に係る情報から使っていくことになります。