移動平均法による払出価額の計算
移動平均法とは
移動平均法とは、商品を受け入れるつど、または、払い出すつど、保有する商品の1単位あたり(1個あたり、1 kgあたりなど)の取得原価を計算しなおす方法です。移動平均法は、同じ時点で保有している同じ種類の商品については、それらがいつ受け入れたものであっても、同じ金額で評価されるべきとする仮定のもとで行われる払出単価の計算方法です。このため、移動平均法は、受入時期による取得原価の変化がそれほど多くない商品や、時間の経過による劣化が起こりにくい商品の払出単価を求めるのに適しています。
移動平均法は、商品を受け入れるつど、または、払い出すつど1単位当たりの取得原価を計算する方法ですので、商品の受入れおよび払出しの状況は、会計期間中、常に記録しておく必要があります(継続記録法)。この商品の受入れおよび払出しの状況を記録するにあたっては、商品有高帳とよばれる補助簿が使用されることもあります。
1単位当たりの取得原価を計算するタイミング
移動平均法には、1単位当たりの取得原価を商品を受け入れたときに計算する方法と、商品を払い出したときに計算する方法の2つの方法があります。
商品を受け入れるつど計算する方法
1単位当たりの取得原価を商品を受け入れるつど計算する場合は、商品を受け入れた直後に、次のようにその金額を計算します。
1単位当たりの取得原価 =(受入前に保有していた商品の価額※ + 新たに受け入れた商品の取得原価)÷(受入前に保有していた商品の単位数[個数など] + 新たに受け入れた商品の単位数[個数など])
【例】X商品20個を17,000円で仕入れた。仕入前に保有していたX商品の数は30個、金額は23,000円であった。
【答】1個当たりの取得原価 =(17,000円 + 23,000円)÷(20個 + 30個)= 800円
ここで計算された1個当たりの取得原価は、その後、新たに商品を受け入れるか、商品の受入数量または金額の修正(返品、値引き・割戻しなど)により、その金額が計算しなおされるまで、払い出した商品の金額(払出価額)を求めるために使用されます。
商品を払い出すつど計算する方法
1単位当たりの取得原価を商品を払い出すつど計算する場合は、商品を払い出す直前に、次のようにその金額を計算します。
1単位当たりの取得原価 = 払出前に保有している商品の価額÷払出前に保有している商品の単位数[個数など]
【例】Y商品を売り上げた。売上前に保有していたX商品の数は40個、金額は24,000円であった。
【答】1個当たりの取得原価 = 24,000円÷40個 = 600円
ここで計算された1個当たりの取得原価は、その直後に行われる商品の払出しにおいて、払い出した商品の金額(払出価額)を求めるために使用されます。
2つの方法の選択
同じ種類の商品について、毎日のように、さらには、1度に何度も払出しが行われるような場合(コンビニエンスストアに陳列されている商品など)については、商品を受け入れるつど1単位当たりの取得原価を計算する方法のほうが計算量を少なく抑えることができます。商品を払い出すつど1単位当たりの取得原価を計算する方法を選択してしまうと、毎日、さらには、1日に何回もその金額を計算しなければならなくなってしまうからです。