省令「医療法人会計基準」と通知「医療法人会計基準」の比較
下表において、省令「医療法人会計基準」とは、平成28年厚生労働省令第95号「医療法人会計基準」のことを指し、通知「医療法人会計基準」とは、四病院団体協議会が起草し、平成26年3月19日付厚生労働省医政局長発通知(医政発0319第7号)「医療法人会計基準について」において「一般に公正妥当と認められる会計の慣行の一つ」として認められた「医療法人会計基準」のことを指します。
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総則
省令「医療法人会計基準」 | 通知「医療法人会計基準」 | ||
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第1条 | 医療法(昭和23年法律第205号。以下「法」という。)第51条第2項に規定する医療法人(以下「医療法人」という。)は、この省令で定めるところにより、貸借対照表及び損益計算書(以下「貸借対照表等」という。)を作成しなければならない。ただし、他の法令に規定がある場合は、この限りではない。 | 第1 1 | この会計基準は、医療法(昭和23年法律第205号)第39条の規定に基づき設立された医療法人(以下「医療法人」という。)の計算書類(貸借対照表、損益計算書及び注記表並びに財産目録をいう。以下同じ。)の作成の基準を定め、医療法人の健全なる運営に資することを目的とする。 |
第2条 | 医療法人は、次に掲げる原則によって、会計処理を行い、貸借対照表等を作成しなければならない。 一 財政状態及び損益の状況について真実な内容を明瞭に表示すること。 二 全ての取引について、正規の簿記の原則によって、正確な会計帳簿を作成すること。 三 採用する会計処理の原則及び手続並びに貸借対照表等の表示方法については、毎会計年度継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。 四 重要性の乏しいものについては、貸借対照表等を作成するために採用している会計処理の原則及び手続並びに表示の方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができること。 |
第1 2 | 医療法人は、次に掲げる原則に従って計算書類を作成しなければならない。 一 計算書類は、財政状態及び損益の状況に関する真実な内容を明瞭に表示するものでなければならない。 二 計算書類は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳された会計帳簿に基づいて作成しなければならない。 三 会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法は、毎会計年度これを継続して適用し、みだりに変更してはならない。 四 重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができる。 |
第3条 | 貸借対照表等を作成するために採用している会計処理の原則及び手続並びに表示方法そのほか貸借対照表等を作成するための基本となる事項(次条において「会計方針」という。)で次に掲げる事項は、損益計算書の次に記載しなければならない。ただし、重要性の乏しいものについては、記載を省略することができる。 一 資産の評価基準及び評価方法 二 固定資産の減価償却の方法 三 引当金の計上基準 四 消費税及び地方消費税の会計処理の方法 五 その他貸借対照表等作成のための基本となる重要な事項 |
第4 2 | 二 重要な会計方針に係る事項の注記 |
第4条 | 会計方針を変更した場合には、その旨、変更の理由及び当該変更が貸借対照表等に与えている影響の内容を前条の規定による記載の次に記載しなければならない。 | 第4 2 | 三 会計方針の変更に関する注記 |
第5条 | 貸借対照表における資産、負債および純資産並びに損益計算書における収益及び費用は、原則として総額をもって表示しなければならない。 | ||
第6条 | 貸借対照表等に係る事項の金額は、千円単位をもって表示するものとする。 | ||
第1 3 | 医療法人の会計年度は、定款又は寄附行為で定められた期間によるものとする。 |
貸借対照表
省令「医療法人会計基準」 | 通知「医療法人会計基準」 | ||
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第7条第1項 | 貸借対照表は、会計年度の末日における全ての資産、負債及び純資産の状況を明瞭に表示しなければならない。 | 第2 1 | 貸借対照表は、当該会計年度末現在におけるすべての資産、負債及び純資産の状態を明瞭に表示するものでなければならない。 |
第7条第2項 | 貸借対照表は、様式第一号により記載するものとする。 | ||
第8条 | 貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部に区分し、更に、資産の部を流動資産及び固定資産に、負債の部を流動負債及び固定負債に、純資産の部を出資金、基金、積立金及び評価・換算差額等に区分するものとする。 | 第2 2 | 貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部に分かち、更に資産の部を流動資産及び固定資産に、負債の部を流動負債及び固定負債に区分するものととする。 |
第2 3 | 貸借対照表の純資産は、出資金、基金、積立金及び評価・換算差額等に区分するものとする。 | ||
第9条 | 資産については、その取得価額をもって貸借対照表価額としなければならない。ただし、当該資産の取得のために通常要する価額と比較して著しく低い価額で取得した資産又は受贈その他の方法によって取得した資産については、取得時における当該資産の取得のために通常要する価額をもって貸借対照表価額とする。 | 第2 4 | 資産の貸借対照表価額は、原則として、当該資産の取得価額を基礎として計上しなければならない。受贈等によって取得した資産の取得価額は、その取得時における公正な評価額とする。 |
第2 4 | 棚卸資産については、取得価額をもって貸借対照表価額とする。ただし、時価が取得価額よりも下落した場合には、時価をもって貸借対照表価額とする。 | ||
第10条第1項 | 固定資産(有形固定資産及び無形固定資産に限る。)については、次項及び第3項の場合を除き、その取得価額から減価償却累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。 | 第2 4 | 有形固定資産及び無形固定資産については、その取得価額から減価償却累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。 |
第10条第2項 | 固定資産(次条に規定する有価証券及び第12条第1項に規定する金銭債権を除く。)については、資産の時価が著しく低くなった場合には、回復の見込みがあると認められるときを除き、時価をもって貸借対照表価額とする。 | 第2 4 | 資産の時価が著しく下落したときは、回復の見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。 |
第10条第3項 | 第1項の固定資産については、使用価値が時価を超える場合には、前2項の規定にかかわらず、その取得価額から減価償却累計額を控除した価額を超えない限りにおいて使用価値をもって貸借対照表価額とすることができる。 | 第2 4 | ただし、有形固定資産及び無形固定資産について使用価値が時価を超える場合、取得価額から減価償却累計額を控除した価額を超えない限りにおいて使用価値をもって貸借対照表価額とすることができる。 |
第11条 | 市場価格のある有価証券(満期まで所有する意図をもって保有する債券(満期まで所有する意図をもって取得したものに限る。)を除く。)については、時価をもって貸借対照表価額とする。 | 第2 4 | 満期日まで所有する意思をもって保有する社債その他の債券以外の有価証券のうち、市場価格のあるものについては、時価をもって貸借対照表価額とする。 |
第12条第1項 | 未収金及び貸付金その他の金銭債権については、徴収不能のおそれがある場合には、貸倒引当金として当該徴収不能の見込額を控除するものとする。 | 第2 4 | 未収金、貸付金等の債権については、取得価額から貸倒引当金を控除した額をもって貸借対照表価額とする。 |
第12条第2項 | 前項の場合にあっては、取得価額から貸倒引当金を控除した金額を貸借対照表価額とする。 | ||
第13条 | 出資金には、持分の定めのある医療法人に社員その他法人の出資者が出資した金額を計上するものとする。 | 第2 3 | 出資金には、当該医療法人が持分の定めのある医療法人である場合において社員等が出資した金額を計上する。 |
第14条 | 基金には、医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第30条の37の規定に基づく基金(同令第30条の38の規定に基づき返還された金額を除く。)の金額を計上するものとする。 | 第2 3 | 基金には、当該医療法人に対する拠出金のうち返還可能性を有する金額を計上する。 |
第15条第1項 | 積立金には、当該会計年度以前の損益を積み立てた純資産の金額を計上するものとする。 | 第2 3 | 積立金には、当期以前の損益を源泉とした純資産額を、その性格[に]応じた名称を付して計上する。 |
第15条第2項 | 積立金は、設立等積立金、代替基金及び繰越利益積立金その他積立金の性質を示す適当な名称を付した科目をもって計上しなければならない。 | ||
第16条 | 評価・換算差額等は、次に掲げる項目の区分に従い、当該項目を示す名称を付した科目をもって掲記しなければならない。 一 その他有価証券評価差額金(純資産の部に計上されるその他有価証券の評価差額をいう。) 二 繰延ヘッジ損益(ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べられるヘッジ手段に係る損益又は時価評価差額をいう。) |
第2 3 | その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益のように、資産又は負債は時価をもって貸借対照表価額としているが当該資産又は負債に係る評価差額を当期の損益としていない場合の当該差額は、評価・換算差額等に計上する。 |
損益計算書
省令「医療法人会計基準」 | 通知「医療法人会計基準」 | ||
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第17条第1項 | 損益計算書は、当該会計年度に属する全ての収益及び費用の内容を明瞭に表示しなければならない。 | 第3 1 | 損益計算書は、当該会計年度に属するすべての収益及び費用の内容を明らかにするものでなければならない。 |
第17条第2項 | 損益計算書は、様式第二号により記載するものとする。 | ||
第18条 | 損益計算書は、事業損益、経常損益及び当期純損益に区分するものとする。 | 第3 2 | 損益計算書は、事業損益計算、経常損益計算及び純損益計算に区分するものとする。 |
第19条 | 事業損益は、本来業務事業損益、附帯業務事業損益及び収益業務事業損益に区分し、本来業務(医療法人が開設する病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に係る業務をいう。)、附帯業務(医療法人が行う法第42条各号に掲げる業務をいう。)又は収益業務(法第42条の2第1項に規定する収益業務をいう。以下同じ。)の事業活動(次条において「事業活動」という。)から生ずる収益及び費用を記載して得た各事業損益の額及び各事業損益の合計額を計上するものとする。 | 第3 3 | 事業損益計算は、本来業務事業損益、附帯業務事業損益、収益業務事業損益に分かち、それぞれの事業活動から生ずる収益及び費用を記載して各事業損益を示し、併せて全事業損益を示すものとする。 |
第20条 | 経常損益は、事業損益に、事業活動以外の原因から生ずる損益であって経常的に発生する金額を加減して計上するものとする。 | 第3 3 | 経常損益計算は、事業損益計算の結果を受けて、事業活動以外の原因から生ずる収益及び費用であって経常的に発生するものを記載して経常損益を示すものとする。 |
第21条 | 当期純損益は、経常損益に、特別損益として臨時的に発生する損益を加減して税引前当期純損益を計上し、ここから法人税その他利益に関連する金額を課税標準として課される租税の負担額を控除した金額を計上するものとする。 | 第3 3 | 純損益計算は、経常損益計算の結果を受けて、臨時的に発生する収益及び費用を記載して税引前当期純損益を示し、ここから法人税等の負担額を控除して当期純損益を示すものとする。 |
補則
省令「医療法人会計基準」 | 通知「医療法人会計基準」 | ||
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第22条 | 貸借対照表等には、その作成の前提となる事項及び財務状況を明らかにするために次に掲げる事項を注記しなければならない。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。 一 継続事業の前提に関する事項 二 資産及び負債のうち、収益業務に関する事項 三 収益業務からの繰入金の状況に関する事項 四 担保に供されている資産に関する事項 五 法第51条第1項に規定する関係事業者に関する事項 六 重要な偶発債務に関する事項/ 七 重要な後発事象に関する事項 八 その他医療法人の財政状態又は損益の状況を明らかにするために必要な事項 |
第4 1 | 注記表は、貸借対照表及び損益計算書の作成の前提となる事項及び補足する事項を記載することにより、財務状況を明らかにするものでなければならない。 |
第4 2 | 注記表は、次に掲げる項目に区分するものとする。 一 継続事業の前提に関する注記 二 重要な会計方針に係る事項の注記 三 会計方針の変更に関する注記 四 貸借対照表に関する注記 五 損益計算書に関する注記 六 純資産の増減に関する注記 七 キャッシュ・フローの状況に関する注記 八 関連当事者に関する注記 九 重要な後発事象に関する注記 十 その他の注記 |
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第4 3 | 次に掲げる場合には、当該項目を注記表として掲載することを要しない。 一 財務諸表に関する注記として別途記載する場合 二 当該項目を別途単独の財務諸表として取り扱う場合 三 当該項目を別途附属明細表として取り扱う場合 次の項目は、社会医療法人を除き、注記表として記載することを省略することができる。 一 キャッシュ・フローの状況に関する注記 二 関連当事者に関する注記 |
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第4 4 | 継続事業の前提に関する注記は、当該医療法人の事業年度の末日において、財務指標の悪化の傾向、重要な債務の不履行等財政破綻の可能性その他将来にわたって事業を継続することの前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合におけるその内容を記載する。 | ||
第4 5 | 重要な会計方針に係る事項に関する注記は、計算書類の作成のために採用している会計処理の原則及び手続並びに表示方法その他計算書類作成のための基本となる事項であって、次に掲げる事項とする。 一 資産の評価基準及び評価方法 二 固定資産の減価償却方法 三 引当金の計上基準 四 消費税等の会計処理方法 五 その他計算書類作成のための基本となる重要な事項 |
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第4 6 | 重要な会計方針を変更した場合には、その旨、変更の理由及び当該変更による影響額を記載する。 | ||
第4 7 | 貸借対照表に関する注記は、次に掲げる事項とする。 一 基本財産の増減及びその残高 二 固定資産の増減及びその残高 三 引当金の増減及びその残高 四 借入金(社会医療法人債、医療機関債を含む。)の増減 五 有価y総研の内訳 六 資産及び負債のうち、収益業務に係るもの 七 担保に供している資産 八 債権について貸倒引当金を直接控除した残額のみを記載した場合には、当該債権の債券金額、貸倒引当金及び当該債権の当期末残高 九 賃貸借処理をしたファイナンス・リース取引がある場合には、貸借対照表科目に準じた資産の種類ごとのリース料総額及び未経過リース料の当期末残高 十 保証債務、重要な係争事件に係る損害賠償義務等の偶発債務 十一 その他必要な事項 |
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第4 8 | 損益計算書に関する注記は、次に掲げる事項とする。 一 事業費用の内訳 二 収益業務からの繰入金の状況 三 その他必要な事項 |
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第4 9 | 純資産の増減に関する注記は、純資産の部の増減及びその残高について科目別に記載する。 | ||
第4 10 | キャッシュ・フローの状況に関する注記は、当該会計年度のキャッシュ・フローの金額(事業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローに区分する。)及び資金残高を記載する。 | ||
第4 11 | 関連当事者との取引について、次に掲げる事項を原則として関連当事者ごとに注記しなければならない。 ① 当該関連当事者が法人の場合には、その名称、所在地、直近の会計期末における資産総額及び事業の内容。なお、当該関連当事者が会社の場合には、当該関連当事者の議決権に対する当該医療法人を所有割合。 ② 当該関連当事者が個人の場合には、その氏名及び職業 ③ 当該医療法人と関連当事者との関係 ④ 取引の内容 ⑤ 取引の種類別の取引金額 ⑥ 取引条件及び取引条件の決定方針 ⑦ 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高 ⑧ 取引条件の変更があった場合には、その旨、変更の内容及び当該変更が計算書類に与えている影響の内容 ただし、関連当事者との間の取引のうち、次に定める取引については、上記の注記を要しない。 ①一般競争入札による取引並びに預金利息及び配当金の受取りその他の取引の性格からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引 ②役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い |
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第4 12 | 重要な後発事象に関する注記は、当該医療法人の会計年度の末日後、当該医療法人の翌会計年度以降の財政状態又は損益の状況に重要な影響を及ぼす事象が発生した場合にその内容を記載する。 | ||
第4 13 | その他医療法人の財政状態又は損益の状況を明らかにするために必要な事項がある場合には、その内容を記載する。 | ||
第5 1 | 財産目録は、当該会計年度末現在におけるすべての資産及び負債につき、価額および必要な情報を表示するものとする。 | ||
第5 2 | 財産目録は、貸借対照表の区分に準じ、資産の部と負債の部に分かち、更に資産の部を流動資産及び固定資産に区分して、純資産の額を表示するものとする。 | ||
第5 3 | 財産目録の価額は、貸借対照表記載の価額と同一とする。 |