経過措置型医療法人に対する留保金課税の導入に関する検討
掲載誌 | 和光経済(和光大学社会経済研究所) |
巻・号 | 第55巻第2号 |
開始・終了頁 | 1-13頁 |
発行日 | 2022年12月20日 |
論文掲載サイト | https://wako.repo.nii.ac.jp/records/4980 |
目次
- はじめに
- 留保金課税の適用対象と特別税額の計算方法
- 留保金課税の適用対象
- 留保金課税における特別税額の計算
- 経過措置型医療法人における社員持分の位置づけ
- 医療法人の個人「企業」化の歴史的経緯
- 第5次「医療法」改正の趣旨
- 経過措置型医療法人の定款変更が進まない理由
- 経過措置型医療法人に対して留保金課税を行うことの意義
- 経過措置型医療法人に対して留保金課税を行わないことの問題
- 個人レベルの非営利性は存在しない
- 経過措置型医療法人に対して留保金課税を行うにあたって考慮すべき事項
- 個人による経営支配の判定基準
- 小規模法人に対する留保金課税の免除
- 経過措置型医療法人の経営実態に見合った留保控除額の設定
- おわりに
要旨
第5次「医療法」改正によって、2007年4月1日以降設立される社団医療法人(新型医療法人)では、社員の法人財産に対する残余財産分配請求権(解散時以外の持分請求権を含む)が認められなくなった。しかし、その一方で、2007年3月31日以前に開設されていた社団医療法人(経過措置型医療法人)については、当分の間、このような社員の残余財産分配請求権を維持することが認められている。経過措置型医療法人に対しては、残余財産請求権を放棄することが求められているが、このような定款変更はほとんど進んでいない。本論文では、経過措置型医療法人に対して同族会社と同様の留保金課税を導入し、新型医療法人と同様に、医療法人がその事業を通じて生み出した剰余金を国庫に還元させることの意義を明らかにするとともに、その導入にあたって、同族会社と医療法人との違いをどのように調整すべきかについて検討した。
参考文献
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- 河野鐡雄・室三郎『醫療法人制度の解説』東京医政社、1950年。
- 坂井一雄「小規模企業に対する課税のあり方について―小規模企業に対するパス・スルー課税の検討を中心に―」『税大論叢』第81号、2015年。
- 品川芳宜「持分あり医療法人の実態と今後の方向性」『資産承継』2018冬号、2018年。
- 杉山幹彦・石井孝宜・五十嵐邦彦『医療法人の会計と税務』(八訂版)、同文舘出版、2014年。
- 谷川栄一「医療の非営利性をめぐって・補遺―株式会社参入反対論に対するある疑問―」『社会保険旬報』第2170号、2003年。
- 塚原薫「医療法人の発展と医療法人制度改革の展開―その活性化をめぐって―」『名古屋学院第額論集 社会科学編』第49巻第3号、2013年。
- 椿祐輔『税理士が知っておきたい開業医の税務と生涯設計』中央経済社、2017年。
- 新田秀樹「医療の非営利性の要請の根拠」『名古屋大学法政論集』第175巻、1998年。
- 福永肇『日本病院史』PILAR PRESS、2014年。
- 宮脇義男「医療法人制度改革と医療の非営利性」『いのちとくらし研究所報』第17号、2006年。
- 四元秀伸「留保金課税制度に関する一考察」『創価大学大学院紀要』第43集、2022年。
- 海老原諭「医療法人による『関係事業者との取引の状況に関する報告書』における情報開示の現状と課題―第7次改正『医療法』施行初年度の開示状況調査をもとに―」『和光経済』第54巻第2・3号、2022年。