医療法人による「関係事業者との取引の状況に関する報告書」における情報開示の現状と課題―第7次改正「医療法」施行初年度の開示状況調査をもとに―
掲載誌 | 和光経済(和光大学社会経済研究所) |
巻・号 | 第54巻第2・3号 |
開始・終了頁 | 9-26頁 |
発行日 | 2022年3月8日 |
論文掲載サイト | https://wako.repo.nii.ac.jp/records/4941 |
目次
- はじめに
- 「関係事業者報告書」の作成について発せられた厚生労働省の通知
- 調査の方法
- 使用したデータベース
- データ入手の対象とした医療法人の範囲
- 調査の結果
- 記載事項があった法人、なかった法人
- 開示されていた関係事業者の数
- 法人である関係事業者との取引の状況に関する記載事項
- 個人である関係事業者との取引の状況に関する記載事項
- 考察
- 「関係事業者報告書」作成要領の必要性
- 規制側の意識改革の必要性
- おわりに
要旨
本研究では、第7次改正「医療法」によってすべての医療法人に対して作成が義務づけられるようになった「関係事業者との取引の状況に関する報告書」について、「医療法」第51条第2項の適用対象となる全国467法人の開示状況を調査した。「関係事業者との取引の状況に関する報告書」の様式は、企業会計における「関連当事者の開示に関する会計基準」における様式にならって作成されているが、その作成にあたって厚生労働省から具体的な作成指針が示されておらず、どのような情報をどのような形で開示するかについて、医療法人側の判断が多分に必要な状態にあった。調査の結果、公認会計士監査が義務づけられる「医療法」第51条第2項適用法人であるにもかかわらず、同じ内容が異なる場所に記載されている、表示が不十分で取引の内容を特定できないなど、異なる医療法人間での比較可能性を確保できないレベルの情報開示となっていたことが確認された。
参考文献
- 新田秀樹「医療の非営利性の要請の根拠」『名古屋大学法政論集』第175巻、1998年。
- 福山祐介「医療法人会計基準政策導入の事例分析と今後の課題:東海3県へ届出のあった医療法人決算関係書類の分析をもとに」『日本医療・病院管理学会誌』第57巻第4号、2020年。
- 海老原諭「医療法人に係る会計ディスクロージャー制度のねらいとその限界―会計情報に対する『世間からの目』の違いに着目して―」(和光大学経済経営学部『現代に問う経済のあり方、経営のあり方(和光大学経済経営学部55周年記念 研究論文編』所収)、2021年。