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総記法による商品売買取引の処理

最終更新日:2024年02月25日

総記法とは、会計期間中の商品の動きをすべて商品勘定を使って記録していく方法です。売上原価対立法分記法とは違い、総記法では、商品を仕入れたときには取得原価、商品を売り上げたときはその販売価額を使用するところに特徴があります。

総記法では、商品売買取引から得られる利益の額(売上総利益・粗利)を計算することはできるものの、その利益を計算するもととなった売上高・売上原価を会計帳簿上の記録(各勘定の残高金額)から直接求めることができません。現在、損益計算書では、売上総利益の額だけでなく、売上高・売上原価の額をそれぞれ記載することが求められているため(総額主義)、これらの金額を直接求めることができない総記法は、商品売買取引の原則的な記録方法とはなりません。総記法は、正規の簿記によって会計帳簿を作成しない個人事業主など、利用できる場面が狭く限定されています。

期中の処理

商品を仕入れたとき

会計期間中、商品を仕入れたときは、商品の取得原価を商品勘定の借方に記録します。

商品25,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
商品 25,000 現金 25,000

なお、会計期間中に返品をしたり、値引き・割戻しを受けたときは、その金額を商品勘定の貸方に記録します。

商品を売り上げたとき

会計期間中、商品を売り上げたときは、手放した商品の販売価額を商品勘定の貸方に記録します。

商品60,000円(取得原価20,000円)を売り上げ、代金は現金で受け取った。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 60,000 商品 60,000

なお、会計期間中に返品を受けたり、値引き・割戻しをしたときは、その金額を商品勘定の借方に記録します。

決算時の処理

総記法では、商品の取得原価と販売価額が同じ商品勘定に記録されます。このため、会計期間中の商品勘定の残高には何の意味もありません(取得原価でも販売価額でもないという意味)。しかし、このままでは財務諸表を作成できません。期末にどれだけの商品を保有しているかも、当期の売上原価がいくらであるかもわからないからです。そこで、決算にあたって、一定の調整が必要になります。

この調整を行うにあたっては、まず、商品勘定の残高金額を商品の期末棚卸高になるよう修正します。商品有高帳などで帳簿棚卸高を計算している場合はその金額、計算していない場合は実地棚卸を行って計算した金額を使います。商品勘定では、通常、利益が上乗せされている分、貸方の合計金額の方が大きくなっていますが、商品勘定はもともと資産の勘定ですので、商品の期末棚卸高が商品勘定の借方残高となるまで商品勘定の借方を増やします。

この増やした金額は、商品勘定の貸方に上乗せされていた利益の額となります。このため、商品勘定の借方を増やしたときの相手勘定は商品売買益勘定とします。会計期間中、商品売買益の額を計算していなくても、商品勘定の調整を行うだけで、自動的に商品売買益の額が計算できてしまいます。

決算にあたり、商品勘定について必要な修正を行う。商品の期末棚卸高は5,000円であり、商品勘定の期末残高は35,000円の貸方残高であった。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
商品 40,000 商品売買益 40,000

この設例では、借方に40,000円(=35,000円+5,000円)を追加したことで、貸方残高35,000円が借方残高5,000円(期末商品棚卸高)となりました。