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簿記の目的

最終更新日:2024年02月25日

簿記の学習を始めるにあたって、まず、簿記がどのようなことを目的としているかについて見ていきましょう。目指すべきゴールがどこか分かっていれば、これから学習するひとつひとつのことについて、その意味や位置づけをイメージしやすくなるからです。

簿記はどのような情報を提供するものか

私達が生きていくためにはお金が必要です。企業はそのお金を稼ぐために作られます。世の中にはさまざまな企業がありますが、そのどの企業にも共通する目的は「私達が生きていくためのお金を稼ぐこと」にあるといえるでしょう。簿記の最大の目的は、この企業の「お金を稼ぐ力」を評価するために必要な情報を提供することにあります。

この企業の「お金を稼ぐ力」を評価するために必要な情報には、次の2つのものがあります。

  1. ある時点で企業が保有している財産の状況に関する情報
  2. それまでに行われた営業活動がどれだけ企業の財産を増やしたかに関する情報

ある時点で企業が保有している財産の状況に関する情報

お金は自然とどこかから湧き出てくるものではありません。企業は、元手となるお金を用意し、そのお金を使って人(従業員など)や物(設備、商品など)を調達し、それらを使って顧客に商品やサービスを提供することではじめてお金を稼いでくることができます。これからたくさんのお金を稼いでいくためには、元手となる財産がたくさん必要です。このため、企業の「お金を稼ぐ力」を評価するためには、何よりもまず、その企業が営業活動のために使える財産をどれだけ保有しているかに関する情報が重要となるでしょう。

それまでに行われた営業活動がどれだけ企業の財産を増やしたかに関する情報

企業がその財産を増やすためには営業活動を行う必要があります。企業が保有している財産に関する情報は、「その時点でどれだけの財産があるか」は分かるものの、「その時点」に至るまでにどのような営業活動が行われたかは分かりません。たとえある時点でたくさんの財産を持っていたとしても、営業活動がうまくいっていなければ、その財産はその後、どんどんと減っていってしまうでしょう。逆に、ある時点であまり財産を持っていなかったとしても、営業活動がうまくいっていれば、その財産はその後、どんどんと増えていくかもしれません。それまでに営業活動がどれだけ企業の財産を増やしたかに関する情報は、その企業の将来の財産の状況を占ううえで重要なものになります。

財務諸表

簿記では、これらの情報を提供するために、財務諸表とよばれる報告書を作成します。財務諸表は、提供する情報の内容によって分けられており、ある時点で企業が保有している財産の状況に関する情報を提供するものを貸借対照表、それまでに行われた営業活動がどれだけ企業の財産を増やしたかに関する情報を提供するものを損益計算書といいます。

貸借対照表

貸借対照表とは、ある時点における企業の財産の状況を、資産、負債、純資産の3つに分けてまとめたものです。貸借対照表は、英語を使ってバランスシート(Balance Sheet)とよばれたり、その省略形を使ってビーエス(B/S)とよばれたりすることもあります。

資産
企業がある時点で保有しているお金(現金や預金)、物品(商品・製品、建物、備品、車両運搬具など)に加えて、将来、これらのものを受け取ることができる権利(売掛金、貸付金など)
負債
企業が、将来、お金や物品を引き渡したり(買掛金、借入金など)、何らかのサービスを提供しなければならない義務(契約負債、前受金など)
純資産
資産の総額から負債の総額を差し引いた金額(負債の総額の方が大きい場合はマイナスの金額になる)

財務諸表を利用する人は、企業が将来にどれだけ稼ぐことができるかを評価したいと考えているため、将来の権利や義務であっても、契約などによってその内容が確定しているのであれば、貸借対照表に記載することが望ましいと考えられています(内容が確定していないものについては記載は認められません)。

損益計算書

損益計算書は、直前に貸借対照表を作成してから、ある時点に貸借対照表を作成するまでの間に行われた営業活動による純資産の増減額を、収益と費用の2つに分けてまとめたものです。損益計算書も、英語の省略形を使ってピーエル(Profit and Loss Statement; P/L)とよばれることがあります。

収益
純資産を増加させた営業活動の内容とその金額。売上、受取手数料、受取家賃など。
費用
純資産を減少させた営業活動の内容とその金額。売上原価、給料、水道光熱費など。

損益計算書で注目するのは資産ではなく、純資産であることに注意してください。資産は、たとえば銀行から借り入れを行うことによっても増やすことができますが、借入金は将来に返済しなければならないものため、企業が将来のことを考えず、自由に使ってしまっていいものではありません。純資産は、この金額が資産の額からこの将来に返済することが必要な負債の額を取り除いた金額であり、企業が自由に使ってしまうことができる財産の額といえます。

なお、収益の総額と費用の総額との差額を当期純損益といいます。当期純損益という言葉は、費用の総額の方が大きかったときの当期純損失と、収益の総額の方が大きかったときの当期純利益という2つの言葉を組み合わせたものになります。

はじめての複式簿記