現金過不足が生じた原因が判明したときの処理
最終更新日:2024年06月15日
現金の帳簿残高が実際有高と一致しなかった場合、ただちにその原因の調査を行います。調査の結果、現金の帳簿残高と実際有高が一致しなかった原因が判明したときは、その原因となった事項について、記録を修正する必要があります。
現金取引の記録に誤りがあった場合
原因を調査した結果、もともと行われていた現金取引の記録に誤りがあった場合は、会計帳簿上、その誤りを修正するための仕訳を行います。
現金取引の仕訳が行われていなかったとき
現金取引の仕訳が行われていなかったときは、その行われていなかった仕訳を追加で行います。原因が判明したことにより、過去に行った現金勘定の修正を行うための仕訳は必要でなくなりますから、この現金の帳簿残高を修正するために過去に行った仕訳を取り消すことを忘れないようにしましょう。
原因判明前の状況
1. 消耗品5,000円を購入し、代金は現金で支払った。しかし、この仕訳を失念していた。
仕訳を忘れた |
2. 現金の帳簿残高は、実際有高よりも5,000円多かった。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金過不足 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
原因判明時の処理
1. 現金の帳簿残高を修正する仕訳の取り消し
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 5,000 | 現金過不足 | 5,000 |
2. 行っていなかった仕訳の追加
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
現金勘定の帳簿残高はこれら2つの仕訳を行っても変わりません。現金の帳簿残高は、ひとつめの仕訳では増加していますが、ふたつめの仕訳ではこれと同じ金額だけ減少しています。このため、これら2つの仕訳を1つにまとめると、次のように現金勘定の記録が消えてしまいます。
原因判明時の処理
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 5,000 | 現金過不足 | 5,000 |
現金取引の仕訳に誤りがあったとき
現金取引の仕訳に誤りがあったときは、過去に行った誤った仕訳と現金の帳簿残高をどちらも取り消したうえで、正しい仕訳を行うことでその誤りを修正できます。
原因判明前の状況
1. 消耗品5,000円を購入し、代金は現金で支払った。しかし、この仕訳を誤って借方・貸方ともに8,000円で仕訳していた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 8,000 | 現金 | 8,000 |
2. 現金の帳簿残高は、実際有高よりも3,000円少なかった。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 3,000 | 現金過不足 | 3,000 |
原因判明時の処理
1. 誤った仕訳の取り消し
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 8,000 | 消耗品費 | 8,000 |
2. 現金の帳簿残高を修正する仕訳の取り消し
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金過不足 | 3,000 | 現金 | 3,000 |
3. 正しい仕訳の追加
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
現金勘定の帳簿残高はこれら3つの仕訳を行っても変わりません。現金勘定には、ひとつめの仕訳で借方に8,000円、ふたつめの仕訳で貸方に3,000円、みっつめの仕訳で貸方に5,000円が記録されます。このため、これら2つの仕訳を1つにまとめると、次のように現金勘定の記録が消えてしまいます。
なお、この設例の場合、消耗品費勘定への記録が3,000円(=8,000円-5,000円)だけ過大になっていますから、この金額を消耗品費勘定の貸方に記録することで、消耗品費勘定の帳簿残高も正しい金額になります。
原因判明時の処理
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金過不足 | 3,000 | 消耗品費 | 3,000 |
ここまでいったん現金の帳簿残高を修正したときの仕訳を取り消してから正しい仕訳を行うという順で説明してきました(青枠)。しかし、もともと現金の帳簿残高と実際有高が一致しなくなってしまった原因は1つであるとは限らず、上の説明のように、当初、現金過不足勘定に計上した金額と、現金過不足が生じる原因となった金額が常に一致するとは限りません。そこで、通常は、現金過不足が生じた原因となった勘定(本来行われるべきであった正しい仕訳における現金勘定の相手勘定)を先に修正したうえで、その相手勘定を現金過不足とするという形で1つの仕訳でまとめて処理してしまうことが一般的です(黄枠)。
現金の実際有高に問題があった場合
現金が棚の下に落ちていた、現金が従業員に横領されていたといったように、現金の実際有高の側に問題があったことが判明することもあります。このうち、落ちていた金額を見つけた、横領された現金が返金されたといったように、現金の実際有高が元の状態に戻った場合は、現金の帳簿残高と実際有高が一致しなかったときに行った現金の帳簿残高を修正する仕訳を取り消す処理を行います。
原因判明前の状況
現金の帳簿残高は、実際有高よりも20,000円多かった。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金過不足 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
原因判明時の処理
現金過不足20,000円が生じた原因が、従業員の横領によるものであることが判明した。この従業員から現金20,000円の返金を受けた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 20,000 | 現金過不足 | 20,000 |
この場合も、当初、現金過不足勘定に計上した金額と、現金過不足が生じる原因となった金額が常に一致するとは限りません。そこで、通常は、現金勘定の金額を先に修正したうえで、その相手勘定を現金過不足とするという形で1つの仕訳でまとめて処理してしまうことが一般的です(黄枠)。
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